「フッ。


タマーネギの風は、恐ろしかろう」


ジイールが、タマーネギの風を止め、言った。


「くっ。


恐ろしい風だ…ぞ。


直接受けていなくても、影響を及ぼすことが出来るとは。


この空間全体が、タマーネギの汁の勢力下にある…」


私は、うつ伏せの状態で、声をしぼり出すようにして言った。


「博士…。


タマーネギの蒸気をなんとかして下さい。


そうしないと…」


サファが私の耳元で今にも泣きだしそうな声で言う。


「難しく、感じる…ぞ。


このホールには、ドアといくつかの窓がある。


多少なら、タマーネギの蒸気を外に出すことが可能だ。


しかし、床にまかれたタマーネギの汁が、あまりに大量なのだ。


仮にドアと窓を開けたとしても、このタマーネギの汁の領域を崩すには至らないだろう。


汁が残っている限り…、蒸気が発生し続けるのだ」


私は、弱々しい声でサファに言葉を返した。


「そんな…」


サファが消え入りそうな声をもらした。