「エーネ様が、怒っていらっしゃいます…」


コリィンが、困った表情になり、言った。


「しゃぁぁぁ、しゃぁぁぁ」


「私は動きません。


この城が立っている丘を明け渡すなんて、


ジイールという方の思う壺ではありませんか。


この国の中心が支配下に置かれてしまうのです。


彼の王になるという野望を成就させかねません。


あなた達、なんとかして食い止めなさいよ、


と、王妃様がおっしゃっています」


エーネ様の言葉の後、コリィンが言った。


「し、しかし、ご自身の身が危険なのです。


屋敷を止められるという保証は、どこにもありません。


どうか安全な場所に…」


エリィナが、必死になって言う。


王が一歩前に踏み出し、口を開く。


「にゃ」


「感謝する。


優しき者達よ。


確かに、この身を考えるなら、避難した方が良いだろう。


だが、


そうするわけにはいかない。


私もエーネと同意見なのだ。


悪に染まった者に、この都市の中心を、明け渡したら、


今ある、この平和が崩れ、


民が苦しめられることになろう。


王として…、


それを見たくはないのだ。


私はこの城に留まる。


あなた方が、


屋敷を止めることを、


信じて待とう」