「博士！


大丈夫ですか？」


壁に衝突した私に、サファが心配そうに聞く。


「とてつもなく頭が痛いぞ。


しかし、着地しようと減速を始めていたため、ダメージはそれほど深くはない。


大丈夫と言える。


空の飛行とは難しいものだ。


少しでも空を飛ぼうとする意志をなくしてしまうと、コントロールが外れてしまう。


着地する直前で、空腹状態にあることに気付いてしまったのだ。


そのため、壁に衝突するという過失を犯してしまった」


「博士…。


しっかりして下さい」


「空腹状態を甘く見てはいけない。


体を構成する力がなくなり、減衰が始まっているのだ。


生命が脅かされている。


その危機的状態において、別のことに集中して作業を行うのは、困難なことだ」


「すいません。


私が考え足らずでした」


サファが拗ねたように言った。


「…すまない。


自分が未熟者であるのに…、取り乱してしまったようだ。


今度からは、そんな危機的状態であっても、なんとか意志力で切り抜けたいと感じる」


「お願いします」


サファが少し笑った感じで言った。


「では、食事施設に入るぞ」


そう言い、私は食事施設の入り口に向かうのだった。