ビュウ。


風の音が、私の耳に響く。


小高い丘からの飛行だ。


国を覆うドームの外に森や川が見える。


良い眺めだ。


そう思った時、私の体がガクッと急降下を始めた。


ビュン！


おぉ！？


空を飛ぼうとする意志が薄れたためだ。


足の粒子のコントロールをないがしろにしてしまった。


地面が近付いてくるぞ！


このままでは、ぶつかる！


「博士！」


サファの悲鳴が聞こえる。


私とて、ぶつかるのは嫌だぞ！


飛べ、私よ！


左手のガントレットが光り、落下していた私の体が止まり、浮上を始めた。


危なかった。


他の事を考えず、集中して飛行する必要があるぞ。


私は、反省し、食事施設に向け、慎重に飛行を開始する。


ビュウ。


見る見るうちに食事施設が近付いてくる。


安定して飛べている。


後もう少しだ。


ビュウ。


後、5mほどだ。


ぐぅ…。


私のお腹が鳴いた。


「うわぁ！」


バァン！


自分のお腹の音に気を取られてしまった私は、着地する直前で食事施設の壁に衝突するのだった。