サファを…、


渡して…、


たまる、か…！


私は、体を震わせた。


ガントレットは…、手元を離れた。


しかし、意志力が、全く届かないわけでは、ない。


神経を集中させ、意志に、方向性を持たせるんだ。


意志力を拡散させず、集束させ、ガントレットに、送るんだ。


そうすれば、まだ、望みがある、はずだ。


私は、回転により麻痺している右手を、無理矢理、斜め下にかざした。


手が力を失い、落ちそうになるが、左手でひじを掴み、固定する。


ブゥン、ブゥン！


凄まじい、回転だ。


ヘッドの端に捕らわれたガントレットの方を向くのは、ほんの一瞬…。


その一瞬を狙い、密度の高い、意志力を送る。


タイミングが少しでもズレれば、意志力がうまく届かない。


時間をかけて意志力を放っても、薄くなってしまい駄目だ。


瞬間的な意志の圧力が必要だ。


チャンスは、1度きり、だ。


私の体は、限界に達している。


集中しろ、私よ。


私は、視線を右手の先に向けた。


その先に、木、池、岩、


そして、ヘッドと、ガントレットがある。


ブゥン！


ブゥン！


ブゥン！


…今だ！


私は、意志力を放った。